トップページに戻る 食品のような日常語を定義することは案外難しい。しかし、用語の意味を明確にしておくことは、何事によらず大切である。 食品には、これを定義した法律がある。食品衛生法では、「この法律で食品とは、すべての飲食物をいう。ただし、薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品は、これを含まない。」と規定している。これでは食品の定義というよりも医薬品との関係を規定したにすぎない。 国際食品規格を定めているCODEXに食品の定義がある。ここでは、食品とは「人の消費を意図して加工されあるいは準加工されまたは素材のままの全ての物質を意味し、飲料、チュウインガムおよび食品の製造・調製・処理に用いられた全ての物質を含む。ただし、化粧品、タバコ、および薬のみに使用される物質は含まない」としている。この定義は参考になるが、規格の一部であるためか、正確さ・分かり易さよりも適用範囲を明確にすることを優先させている。 国際的に有名な百科事典であるBritanicaによると、食品とは「生物体が増殖・修復および活動を維持し、エネルギーを供給するために利用される基本的にタンパク質・炭水化物・脂肪で構成される物質」としている。この説明では栄養の説明が重視されすぎている。 日本の百科事典である平凡大百科事典によると、食品の項で「人間の発育、生存のために外部から摂取するもの。一般的には有害物を含まず、栄養素を1種類以上含んでいる天然物あるいは人工的に加工したもので、食用に供されるもの」と説明している。この説明も傾聴に値するが、 食品を説明するのに食の語を使用しているので、最も重要な部分の説明が欠如している。 改めて広辞苑をみると、食品を「人々が日常的に食物として摂取する物の総称。飲食物。食料品。」としている。この説明も食品を説明するのに食の語を使用しており、言い換えに近い。 筆者は、食品とは「人が栄養素を摂取するための物であって、農水畜産物あるいはこれを素材に調製・加工・製造された物であり、そして一般的には市場を経て供される物である。これと実質的に同じ物を含む。また飲み物も通常は含められる。」と定義する。
この定義を作成するうえでベースにしたのはCODEXのものであるが、
大幅に見直したので新しい定義になっている。まず、食の語を使わずに説明するためには、人が栄養素を摂取する目的であることと素材が農畜水産物であることを記述する必要がある。「市場を経て」を付け加えているのは、市場が食品のキーワード
なので、例えば食べ物を定義する場合には不用である。食品添加物を含むことは否定しないが、これに言及すると農薬・汚染物質などにも言及する必要があるので、ここでは触れないこととした。
食の語を使用しないで例外的なものを説明すると、定義がもっと難解で長いものとなってしまう。これを回避するために後段を設け、実質的に同じ物を加えた。
ここに実質的に同じものとは、野草・野生動物・微生物とこれらの産物である。飲み物は通常含められるが、区別されることもある。この定義によれば医薬品を含まないことは明らかである。チュウインガムを含み、タバコ、化粧品を含まないことはわざわざ断る必要もない。 |