異物は、食品企業にとって食中毒菌とともに最も気を遣う対象である。食中毒菌の場合も個々の菌が規制ハザードかどうか明確でないことを「規制されている微生物か否かの判別」で説明したが、異物の場合もっと明確でない。
異物による危害は、食中毒事件には含められない。したがって、異物の場合は当局よりも消費者からの苦情がより現実的な課題である。異物が規制されているかいないかは、食品企業にとってほとんど問題にならないと推量する。しかしながら、ハザード分析表を作成する立場からは、当該異物を掲載する位置が変わるので看過できない。
目に見える程度の大きさの金属やガラスがハザードであることは常識的である。ところが、これを法令のどこで規制しているかを探しても見当たらない。一方、「ハザードの区分」で説明したように、「食品事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)について」に記述されているハザードは規制されているとみなすことにした。
その結果、この指針には異物のうち金属、ガラス及びじん埃が記述されているので、この3つの異物は規制されていると判断した。
個別に規制している例としては、コナダニ類がある。これは味噌・チーズ・羊かんを例示して、単に存在する場合は問題にならないが、夥しい場合は法令違反になるという通知が出されている。
ただし、これまでに作成したハザード分析表でコナダニを規制ハザードとして採用したのは小麦粉だけである。
上に含まれない異物は多数ある。具体的には石、土、プラスティック、他作物の種子、貯穀害虫や獣毛、人毛など限りない。これらを規制している法令の規定を見つけることができないので、規制されているということができない。
輸入食品検査違反事例のデータを対象に異物で検索すると、2012年では3件ヒットするが、それが何かまで示されていない。石やプラスティックなどで検索してもヒットしない。また、食品衛生法施行規則で規定されているHACCPには
、食品衛生上危害の原因となる物質(ハザードのこと)として全ての食品に「異物」を挙げられている。しかし、ここでは異物を特定していないこと、及びHACCPの認証取得は任意であることから、規制されているとはみな
していない。