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安心に係わる措置の吟味

予防的措置


 国民が不安を持つ食品に対しては、予防的措置を講じて指摘される問題点を詳しく吟味し安全性審査に万全を図れば、国民の安心に寄与することができる。 

予防的措置は予防原則ともいわれ、ヨーロッパにおいて主張する人が多い考え方である。 

予防的措置とは、従来実施されていなかった新しい安全性試験を実施するため、あるいは当該分野の研究が著しく少ないとかあるいは逆に急速に進歩しているために文献等調査が困難な状況にある場合に、その時間的猶予を保証することである。一定期間以内に健康への悪影響を示す科学的根拠が出てこなければ、予防的措置は解除する。 

一部では、予防的措置を安全性が完全に証明されるまでと解釈されている。この見解に立つならば、「安全性は科学で立証できない」の項で説明したように、安全性は証明できないのだから、実質的は禁止にしたのと同じである。販売を禁止にするなら禁止とするべきで、それを目的に予防的措置を課す のであれば、それはまやかしである。 

付け加えると、予防的措置を講ずるに際しては通常は課せられない安全性試験を負わせることが想定される。この場合は、開発企業が実施するべきか、公的資金で実施することも考慮する必要がある。案外知られていないことであるが、安全性試験は開発企業が自前の資金で実施している。 法令で定められた安全性試験を実施するのは当然自前の資金となるけれども、法令に明示されていない安全性試験が必要となった場合は、開発企業に負わせるのが適切でないこともある。特に安全性の観点からは 合理的には要求されないはずの試験の場合がそれに該当する。         

食の不安に係わる要素」で述べたように、食の安心に係わる要素は安全性だけではない。日本では主たる理由が安全性以外の場合でも安全性の問題として対処してきた歴史があるので、予防的措置が禁止に追い込むための方便となる危険をはらんでいる。

(2012年8月作成)