「食生活の長期展望」の事後レビュー


 食品総合研究所では、1988年に食生活の長期展望を目的に専門家に対するアンケート調査を行い、結果をまとめて下記の本として出版している。この時は21世紀初頭を念頭においたので、現在では展望結果の当否を判定できる時期になっている。チームとして実施した成果であるが、個人的に事後レビューを試みる。

 結果は「キートレンドは健康・おいしさ・簡便性」と集約されているので、まずこれらの当否を評価する。まず健康。これは「食生活の変化の方向」の設問で圧倒的に支持されたトレンドである。その後の展開をみると、実際にも健康志向は高まったと言えよう。ただ、これまでは機能性食品など特殊な効果を期待する傾向が強かったが、食育が注目されているように、食事を全体として改善していく方向に関心が移っている。健康志向がより本格化した表れと評価できる。

 次に、おいしさ。これは「購買増加に結びついていく要素」の設問で圧倒的に支持されたものである。その後の推移をみると、重視はされているものの、強まったとは言い難い。おいしさは、それなりに充足していると考えられているようである。

 簡便性に関しては、用語としては利便性 を採用するべきだったと反省しているが、「食生活の変化の方向」の設問で健康と並んで支持された。その後の利便性は確実に進行した。特に「持ち帰り弁当や調理済み食品の増加」は、予想通り顕著であった。ただ、「主婦が夕食に料理する回数」は、予想されたほど減らなかった。家庭での調理回数が減るのではなく、調理 時間が短縮する方向に進んだ。

 いちばん当たらなかったのは、安全性である。「食生活の変化の方向」の設問では、9つの選択肢の中で5番目しか選ばれなかった。 したがって、キートレンドには採用しなかった。ところがその後の推移をみると、食品の安全性に対する消費者の関心は高まったし、その内容も高度になった。この結果は図らずも、調査した頃には専門家の意識と消費者の意識に大きなずれがあったことを明らかにしている。なおここで言及しておきたいことがある。専門分野別にも集計してあるが、分野別にみると「消費者グループ」分野だけでなく、「農協・漁協」分野の 専門家も他の分野に比べて安全性に対する支持が高かった。「農協・漁協」分野の専門家は当時からそのトレンドを感じていた可能性がある。

参照資料: 食品総合研究所・食生活研究チーム():食生活の長期展望, 農林統計協会, 1989.4.1.

食生活のスタジオ

ホームページ