食経験から安全消費実績へ

 
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健康食品の安全性評価に関する考え方などをみると、「十分な食経験がない、又は食経験が少ない」という説明がある。食経験という言葉は、本来的に有無を示す定性的な用語なので、定量的な表現が必要なところで食経験を使用するのは望ましくない。

  1972年に食品衛生法に新開発食品の販売禁止条項が追加された時は、「一般に飲食に供されることがなかつた物」が対象であったので、食経験で表現することができた。

  ところが、2003年に第7条第2項が追加されて、「一般に食品として飲食に供されている物であつて当該物の通常の方法と著しく異なる方法により飲食に供されているもの」と、定性的でなく定量的な規定となったために、用語として食経験を使用することに 無理が生じていた。一方、同じ年に食品安全基本法が制定され、安全に代わってリスクを使用することが多くなった。安全は定性的な表現なので限界があり、この限界から脱却するために定量的な用語であるリスクに代えたのである。

  食経験も同じように定量的な用語に代える必要がある。健康食品分野特に錠剤やカプセル状製品あるいは清涼飲料水の安全性評価に食経験を持ち出す必要性は乏しい。そもそも食経験を英語で表記する場合に、専門家も苦慮している事実がある。

  食経験はCODEXなどで使用している「 a (long) history of safe use 」に該当するので、この訳語が候補になる。ただ、直訳すると安全使用の歴史となるが、これではやや不自然なので意訳して、安全消費実績が適切であろう。安全に消費をしてきた実績のある食品をその実績を裏付けとして安全とみなすと理解できる。
なお、消費者庁が機能性表示食品制度の中で提案した喫食実績では、safeが反映されて おらずhistoryも弱い。  

 

(2015年6月作成)