日本における食品安全行政は、食品安全基本法の制定以降リスク分析の考え方に則して推進されている。これが世界の食品安全行政の趨勢でもある。
リスク分析は、リスク管理、リスク評価、リスクコニュニケーションからなるとされている。ここにリスク評価(リスクアセスメント)機関では、科学的見地からだけの視点で安全性を評価し、その具体的な運用はリスク管理(リスクマネージメント)機関の判断に委ねるという仕組みである。2003年までのリスク評価はリスク管理機関である厚生労働省に設置された薬事・食品衛生審議会が行っていた。これを内閣府に設置された食品安全委員会が担当することし、リスク管理機関と独立させたのである。
食品安全委員会には、12の専門調査会があり、その中には、新開発食品専門調査会や遺伝子組換え食品等専門調査会が含まれる。
特定保健用食品の場合、消費者庁(2009年までは厚生労働省)が必要と判断した案件は、食品安全委員会にリスク評価(食品健康影響評価)を依頼する。食品安全委員会が発足した2003年以降だけでも56品目の安全性審査が実施された。食品安全基本法では健康増進法の案件をリスク評価することを義務づけていないので、リスク評価を依頼する判断は消費者庁(担当部局)の一存という問題を抱えているけれども、リスク評価のシステムは一応機能している。
一方、「健康食品」と機能性表示食品では、厚生労働省や消費者庁が食品安全委員会にリスク評価を依頼する仕組みがない。「健康食品」では、
厚生労働省の通知に則しているとはいえ、本来的に民間における自主規制であり、食品安全委員会によるリスク評価は想定していない。機能性表示食品でも、安全性を自主的に評価して消費者庁に届けるのであって、食品安全委員会によるリスク評価を受けることは想定していない。
新規食品成分が登場するのは、ほとんど全てが健康食品か食品添加物といっても過言ではない。食品添加物では必ずリスク評価を受けるが、健康食品分野ではリスク評価を空洞化させているようにみえる。残念ながら、食品安全委員会がこの問題に対応策を講じていることは確認できない。
(2015年6月作成)
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