食品添加物と機能性成分を並べたのは、両者は食品における存在の仕方がよく似ているにも係わらず、規制のされ方は食品添加物が過剰な不安を背景にした安全安心の例であるのに対し、機能性成分は過剰な安心を背景にした安全安心の例という意味で大きく異なるためである。
食品添加物とは、食品衛生法で、「添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によつて使用する物をいう。」と規定されている。食品添加物の規制は1878年の「アニリン其他鉱属製ノ絵具染料ヲ以テ飲食物ニ着色スルモノ取締」に遡ることができ、食品添加物の規制の歴史は、食品衛生行政の歴史といって過言でないほど、主要な課題であった。このような歴史を背景に、食品添加物の安全感は非常に低い。
機能性成分とは、機能性食品成分の略語であり、健康成分、保健機能成分、関与成分、有効成分などとも呼ばれる。食品分野で機能性という場合、通常は食品の3機能という考え方が背景にある。食品の3機能とは@栄養機能、A感覚機能、B生体調節機能である。このうちB生体調節機能を第3の機能と呼び、そこから保健機能に関与する成分を機能性成分と呼ぶようになった。健康に役立つのだからと、機能性成分の安全感は高い。
食品添加物と機能性成分の食品における存在の仕方は、非常によく似ている。多くの健康食品は、その製造過程において機能性成分を添加もしくは混和している。食品衛生法の条文を素直に読めば、
サプリメント中の機能性成分は食品添加物と解釈される。食品添加物の中の調味料や強化剤の多くと機能性成分がどう違うのかを説明することは困難である。錠剤形態やカプセル形態の健康食品を加工食品と呼ぶようになったので、その違いを説明することは益々難しくなった。
食品添加物は、現在では充分な安全性試験データに基づく施策がなされている。新たな食品添加物は厳しい安全性審査を経ないと指定されない。それでも、「危険食品」などが話題になると、やり玉に挙げられる代表例でもある。機能性成分は安全性審査を受けなくても市販することができる。健康に役立つのだから安全なのだろうという認識に支えられ、規制が話題にならない。公的な健康強調表示の許可・認証を申請しなければ、機能性成分は規制の対象外である。規制対象になるのは、事件を起こした時に限られる。
健康食品でもアマメシバのように規制はした例はあるが、これは被害者が出たからである。食品添加物では被害者が出ればもちろん、被害者が確認できなくても禁止されることがある。たとえばトフロン(AF2)。トフロンは現在50歳以上の方であれば、ほとんどの人が摂取したことがある。多くの方は現在も健康に暮らしている。このトフロンの使用が禁止された。被害者が
確認されたためではなく、発ガン性の存在が疑われだけである。言いたいことは、悪名高いトフロンが持つ程度のリスクであれば、機能性成分として許可・認可され、事件を起こさずに使用され続けることである。
食品添加物と機能性成分の区別の撤廃を主張するには、気掛かりな事実がある。CODEX、アメリカのFDA、EUの安全性規制で、食品添加物と機能性成分を一緒に規制している例が見つからないのである。何故別々にしているのか不思議に思っているが、それを否定するだけの確かな情報・知識を持ち合わせていない。したがって、本ページでは問題の存在を指摘するに留める。
(2015年6月作成)
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