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関心の高い消費者と一般の消費者


食品分野においては、消費者とは国民全体である。これを一括りにして対処するには母体が大きすぎる。少なくとも、関心の高い消費者と一般の消費者は区別して捉えるべきである。 

これを強調するのは、リスコミの対象は本来的に関心の高い消費者を対象にするべきと考えるからである。そうしないと、具体的が議論ができない。リスコミとはリスク管理機関が判断を誤らないように情報・意見を徴集する場である。事情を知らない人に情報を提供する場ではない。リスコミは協議の場なので議論は対等に行うけれども、交渉の場ではないので最終判断はリスク管理機関に委ねられる。従来から行われてきた食品企業とのリスコミでも、このやり方で行われてきた。 

リスコミだけでなく、委員会や審議会など意志決定に係わる場においても、消費者の代表が委員・オブザーバーとなって発言し、意思決定に関与することが大切である。この場合は、専門家と対等に議論できること人材が求められる。消費者団体の幹部というだけではお飾りである。 

一方、一般消費者は公報の対象である。リスコミで一般消費者に議論してもらうのは無理がある。リスコミで正しい知識を伝達するための事業も実施されているが、これは正気のこと かと疑っている。一回だけのリスコミで参加者が納得するにしても、国民全体を対象に実施するためには、大規模リスコミ(1,000人程度)を10万回開催する必要がある。 

一般消費者には、正しい情報を分かり易く説明することが大切である。このことは、お上が賢くて民は愚かというわけではない。一般消費者は他に関心を持つべき事柄が多 すぎて、優先順位を付けているにすぎない。食品安全分野の専門家といえども、他の分野では一般国民である。 

国民世論を形成するのは、この一般消費者である。「安心が優先されるべきケース」で述べたように、国民世論すなわち民意がリスク 評価機関の判断よりも優先する。

(2012年8月作成)