国民が不安を持つ食品に表示を義務付けると、消費者は選択が可能になり、国民の安心を得ることができる。 前項で述べた販売の禁止は 、事業者の活動を否定することから、安全性を理由にする場合以外では難しいことが多い。安心が理由の場合には、表示の義務化が現実的で効果が期待できる措置である。 表示には、安全性だけでなく栄養や品質、産地など多様な項目がある。したがって、何を根拠に表示するのかを明確にするべきである。安心を理由にする場合と安全性を理由にする場合とは区別されるべきである。 表示を義務化すると、表示の対象となった食品(化学物質)はリスクが高いと誤認させる効果がある。このために、ネガティブ表示と呼ぶべき表示が横行している。無添加、無農薬、非GMOなどである。横行しているということは、効果があることであり、不安を持っている消費者が少なくないことを示している。問題は 事実を伴わない偽表示が横行していることである。表示を有効に活用するためには、偽表示の取締りが求められる。また、食品添加物というだけで表示を義務付けていることが、食品添加物の安全感を下げている。 安心や安全性の理由から表示させる項目については、公平な判定基準を策定する必要がある。 表示の所管が厚生労働省や農林水産省から消費者庁に移った。安全とは別に安心を理由に表示を義務化することが容易になったといえる。 食品事業者は表示したい項目としたくない項目がある。販売増加に繋がる項目は自主的にでも表示する。販売増加に役立たない項目の表示はなるべく減らしたい。食品事業者としては当然の措置である。安心を理由として表示は後者のことが多いので、任意表示であれば実行されない。表示するのであれば、義務表示が原則である。 表示の問題点として、消費者が案外確認しないことがある。一方、食品事業者にとっては、経費などの負担増となる。激烈な価格競争を強いられているなかで、表示しない事業者が有利になるかもしれない。義務表示が必要な理由はここにもある。 表示には、アレルギー表示のように特定集団に役立つ例がある。アレルギー表示は安全性が理由であるが、安心が理由の場合にも同様のことが想定される。 |