ハザード分析表においては、ハザードの特性を記述する目的で、表頭に「主な危害」の欄を設け、当該ハザードが引き起こす(かもしれない)危害を紹介している。
食中毒事件や食品公害事件は少なからず起きているので、この欄には分かり易い情報を掲載できると予想していた。しかしながら、慢性毒性が懸念されるハザードを中心に、具体的な危害は案外分かっていない。
「主な危害」には、食品安全委員会のリスク評価(食品健康影響評価)結果がある場合、原則としてその記載内容から採択した。ここに、リスク評価は食品を特定して実施することが多いけれども、その結果はハザード分析表を作成した食品にも適用できるとみなした。食品安全委員会のリスク評価結果は専門家独特の言い回しがあり、危害についての記述はかなり曖昧である。ハザード分析表では人の健康への影響を知りたいのであるが、多くの場合は動物試験結果に留まっている。動物試験結果を採択した場合は、危害名の後ろに「(動)」を付けた。人への危害を示す実験結果についての記述があっても、多くの場合それを否定するような文言が続く。人の健康への影響をなるべく取り上げたいので、危害の記述があってかつ明確には否定されていない場合
には採択することもある。ただし、そのような場合には、食品安全委員会の公式見解でないことが分かるように、危害の後ろに「(疑)」を付けた。
なお、リスク評価結果がある場合でも、農林水産省のサイトのリスクプロファイルに人への危害についての記述がある場合は、これを採用した。
リスク評価結果がない場合でも、微生物と異物については、常識的な内容を記述している。その他では必ずしも統一的ではないが、農林水産省のリスクプロファイルが役に立つことが多かった。ICSC(国際化学物質安全カード)や中毒関係の資料なども当たったが、これらの資料では大量に摂食するとか暴露したような特殊な例が大部分なので、あまり採用できなかった。
ここでは原著論文は参照していないことを確認しておく。このような目的では原著論文に当たることが重要と認識しているけれども、個々のハザードに対し個人が信頼のある結論を導くことは実際問題として不可能である。食品安全委員会がリスク評価を行っている現状をみると、日本おける当該分野の専門家
が集って時間を掛けて調査・審議して、それでも上述のような曖昧な結論を得ている。
(2014年2月作成)