食品の安全性に係わる法律の中で中核をなす法律は、名目的には食品安全基本法であり、実質的には食品衛生法である。一方、農業生産過程については、規定上からみても食品衛生法の適用外にみえるし、実際にも規制していない。安全性確保を含めて農業生産過程を管轄する法律は別途存在する。
ただし、食品産業分野における食品衛生法のように農業分野を網羅した安全性に係わる法律は存在しない。分野毎に別々の法律が存在する。そしてこれらの法律は食品としての安全性に対する係わり
が全体として弱かった。中には、農薬取締法や家畜伝染病予防法のように、食品の安全性と係わっていることが明確な法律もある。ところが、農薬取締法にしても家畜伝染病予防法にしても、元々は農薬の有効性とか農業者の保護あるいは家畜の保護に重点が置かれていた。
その他の法律になると、食品の安全性に係わっているのか必ずしも明確でない。つまり、各法律が食品安全に係わるかを判別する必要があった。その判定の方法は、法律の目的に人の健康などの文言があるか否かによることとした。その結果、安全性に係わると判断した法律は、
農薬取締法
肥料取締法
飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律
家畜伝染病予防法
牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法
流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法
食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法
薬事法(共管)
牛海綿状脳症対策特別措置法(共管)
農用地の土壌の汚染防止に関する法律(共管)
で、安全性に係わらないと判断した法律は、
植物防疫法
農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律
であった。
安全性に係わると判断した法律の中には、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法のように、具体的なハザードが含まれない法律もある。また特筆しておくべきこととであるが、安全性に係わると判断した法律の法令に記述されているハザードは全て規制ハザードとしたので、実際には認識ハザードにもならないようなハザードも規制ハザードとして挙げることになった。しかしながら、これを仕分けようとすると当該分野の十分な知識が必要となり、
実際には困難である。