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リスク管理は一元化が必要


  ハザード分析表ではフードチェーンの全過程を対象にしている。食品の安全性確保は全ての過程で適切な措置を講じなければ達成できないので、当然のことである。これはフードチェーンアプローチと呼ばれている。ところが日本においては、二つの行政機関がフードチェーンのその途中で仕分けて、食品安全行政を別個に所管している。

  具体的には農業生産過程と食品加工過程以降で分けられている。前者を農林水産省が後者を厚生労働省が所管している。日本の法律体系からすれば、厚生労働省が所管している食品衛生法がフードチェーン全体をカバーするのが妥当にみえる。ところが、食品衛生法では第4条のEの営業の定義で「ただし、農業及び水産業における採取業はこれを含まない」としている。この規定の解釈には異論もあるが、農業と農家の庭先での営みは食品衛生法の適用外とみるのが常識的である。実際、農林水産省が所管する法律で農業や水産業を安全性確保も含めて所管している。

  これを強調するのは、ハザード分析表を作成していると農業生産過程で多くのハザードが発生していることが確認できるためである。食品加工過程よりも多い例もある。上で述べたフードチェーンアプローチのポイントは、将に農業生産過程と食品加工過程のリスク管理面での統合である。

  どちらかに集約するとすれば、農林水産省がベターと思われる。というのは、農業や水産業だけでなく食品産業も農林水産省が所管している。産業振興行政と安全確保行政を別の省が所管している例は、食品産業以外には見当たらない。所掌事項の激変は妥当でないとすれば、食品衛生法の適用範囲を農業および水産業にまで広げ、食品衛生法を厚生労働省と農林水産省との共管とするのが良いかもしれない。あるいはアメリカのFDAを参考に、日本版のFDAを設立し厚生労働省と農林水産省の共管にすることも考えられる。

(2013年12月作成)