規格基準が規定しているハザードの多くを占めるのは食品添加物と残留農薬である。このうち食品添加物もここで規定しているのは指定添加物だけで、この他に既存添加物、一般飲食物添加物、天然香料添加物があって複雑な規制体系となっているが、食品添加物はまだ分かり易い。
残留農薬は、専門外の者にとって大変分かり難いものとなっている。というのは、そもそも規格基準には残留農薬という用語がない。規格基準の第1食品の中の第6項に付随している表「食品に残留する農薬等の成分である物質の量の限度」と規定されている、「残留する農薬等の成分である物質」の通称らしい。それだけでもややこしいのに、農薬等となっているのは農薬だけでなく動物用医薬品と飼料添加物を含まれる。トマトのように農産物の場合は後者の二つを考慮しなくてもいいが、牛乳や豚肉だとこれが問題になる。ハザード分析表では農薬と動物用医薬品や飼料添加物はそれぞれ別の過程で取り扱うので、当該物質が農薬なのか動物用医薬品なのか飼料添加物なのかを区別しなければならない。物質名を見ただけで区別ができるのはこの分野の専門家だけであろう。食品安全分野の専門家であっても、たとえば食中毒の専門家であれば理解
が困難と信じられる。筆者が最初に豚肉のハザード分析表を作成した時はこれらを区別するのを断念した。牛乳のハザード分析表を作成した時に、これに取り組んで3つに区分することができた。
しかも同じ物質が農薬だけでなく動物用医薬品と飼料添加物として使用されることもある。流通している残留農薬等を取り締まる者には、残留農薬として一括してあると便利と聞いているが、一括しないと非常に不便とは考えられない。規制の内容は、生産者から消費者にいたるフードチェーンに係わる全ての関係者が理解し
易い形であることが大切である。
残留農薬等の名称だけでなく、それが農薬なのか動物用医薬品なのか飼料添加物なのか、あるいはそれが複数に跨るのかの情報も一緒に提供されることが望ましい。
(2013年12月作成)