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フードチェーンの全過程を対象とする理由


 ハザード分析表では、食品に含まれるハザードを網羅的にリストアップする。その際に、フードチェーンの全過程に沿ってハザードを挙げることはごく常識的である。CODEXのHACCPでも、フードチェーンの全過程を対象にすることとしている。フードチェーン全過程を対象とすることにより、ハザードを体系的に捉えることができる。

  一般的なHACCPでも、全工程を対象としているが、食品加工過程(工場内)に限っている。食品加工過程の前の農業生産過程などで発生するハザードは原料受入れとして対応している。これでは、農業生産過程などで発生するハザードがブラックボックスとなって、受け入れた原料に含まれるハザードを確実に把握することはできない。また、出荷後のことには全く言及がない。

  ハザード分析表は、この点でCODEXのHACCPの理念に忠実である。産業段階である農業生産過程、素材生産過程、食品加工過程、運輸保管過程、販売過程(外食過程)はもちろん、その前段となる食材本来、そして産業段階に続く消費者段階に至るまで、将にfrom farm to folkの考え方を徹底している。ここで指摘しておくと、フードチェーンの全過程に沿ってハザードを挙げることは、ハザードを網羅するという目的を徹底することにも役立つ。

  ハザード分析表が採用しているフードチェーンアプローチが必要な理由は、各過程で発生したハザードは、後に続く過程に移行すると推定するためである。これにより前の過程から移行してくるかもしれないハザードを的確に把握できる。もちろん、移行しないハザードも存在するが、はじめから挙げないのではなく、これは移行しないハザードとして処理するべきである。

  全過程を対象とすることによって、予期しない発見があった。パンのハザード分析表を作成していて気付いたことであるが、製粉過程(製粉工場)では、原料として持ち込まれる小麦のハザードの低減回避措置を講じている。製粉工場の関係者にとっては当たり前のことのようであるが、この事実が食品安全分野で指摘されることはほとんどなかった。これまでは、食品工場はハザードを付加するばかりで加害者のような捉え方が一般的であった。

(2013年12月作成)