ハザード分析表では、食品が持つハザードを網羅的かつ体系的に挙げることを目的としている。すなわち、食品毎にハザードを挙げることが一つの特徴である。
こう書くと当たり前のように思えるかもしれないが、安全性に関するほとんどの資料はハザード毎にまとめられている。
行政機関は一般にハザード毎に規制しているし、専門家はハザード毎に研究しているので、講演や学術書ではハザード毎になる。これに伴い、安全性に関するほとんどの資料もハザード毎にまとめられるのである。これに対し、個別の食品毎のハザードをまとめた資料が必要と考えている。
個別の食品でなく全ての食品を対象に一つの表を作ることも考えられる。実は、この取り組みの準備段階では、全ての食品を対象にハザードを挙げていた(その時はリスクであったが)。しかしながら、全ての食品を対象とすることは、現実の問題として困難であるだけでなく、作成目的の焦点がぼやけると感じさせられた。個別の食品についてハザードを挙げることにした所以である。
ここに食品とは、食経験が長くてかつ現在も大量に摂取されている普通の食品である。普通の食品のイメージは、普通の人が絶対安全(ゼロリスク)と考えているような食品である。もう少し具体的にいうと「国民健康・栄養調査」の項目として採用されているような食品である。このような食品でも多数のハザードを持つことを示す意図がある。
余談ながら、普通の食品というのはあまり普通に使われる用語ではないらしい。というのは、「普通の食品」でGoogle検索すると、本サイトである「普通の食品のハザード分析表」がトップにランクされるのである。
なお、普通の食品以外の用語としては「安全な食品」も考えられる。実際取り組みの当初は「安全な食品のハザード分析表」としていた。ところが、安全に関する件で安全という同じ用語を使うと紛らわしいことに配慮し
、呼び変えることにした。
普通の食品を対象にする背景には、安全性問題はまず普段からたくさん消費している食品にこそ目を向けるべきという主張がある。同時に、現実の問題として、普通の食品でないと充分にハザードを列挙できないという事情もある。年に1〜2回しか食べないような食品や特定の層しか食べないような食品あるいは特定の地域でしか食べないような食品を対象にすると、ハザードを少ししか挙げることができないはずである。これは当該食品の安全性が高いためでなく、消費量が少ないためにリスクが顕在化し
ていないだけと考えるのが自然である。
付け加えると、普通の食品のもう一つの対極には、いわゆる健康食品がある。健康食品では健康機能情報だけが流布されて、危害についての情報はない。したがって、健康食品のハザード分析表も簡単なものになってしまうはずである。一方、健康機能情報は
リスクに対する懸念を払拭する効果があるので、健康食品があたかも絶対安全のように捉えられている。しかし、それが錯覚であることは説明を要しないと信ずる。
(2013年12月作成)