ハザード分析表の主な特徴は3つある。一つは、ハザードを網羅的にリストアップしていることである。二つ目は生産者から消費者にいたるフードチェーンの全過程に沿ってそこで発生するハザードを体系的に列挙していることである。そして三つ目はハザード分析表を普通の食品毎に作成していることである。
ハザードを網羅的にリストアップすることは、ハザード分析表の作成目的そのものである。当初の目的は、食品が持つハザードを全て挙げることであった。しかしながら、ハザードを非常に広く捉えると、食品に含まれる物質はほとんど全てがハザードになってしまう。いたずらに多くのハザードを挙げることは、作成目的から外れる。そこでリスク分析
関係機関が留意する必要もないようなハザードを外すことにした。この趣旨に基づいて、ハザードを@規制ハザード、A認識ハザード、B一般ハザードの3つに区分し、このうち一般ハザードは外して、規制ハザードと認識ハザードをリストアップすることにした。認識ハザードの概念を導入したことが重要で、これによりハザードを網羅的にリストアップすることを担保にしている。
フードチェーンの全過程に沿ってそこで発生するハザードを列挙するのは、ハザードを体系的に整理するためである。ハザードを網羅的に列挙するために、例えば一般的なHACCPでも(工場内の)工程毎に列挙することとしている。ハザード分析表では、食品工場内に限ら
ず、フードチェーンの全過程を対象にする。産業段階だけでなく、その前に食材自体とその後に消費者段階を置く。産業段階は、農業生産過程、素材生産過程、食品加工過程、運輸保管過程、販売過程(外食過程)に仕分けている。ただし、素材生産過程は業種により多様で、例えばご飯では精米過程だし、ハムではと畜過程である。トマトや豚肉のような生鮮食品では食品加工過程が不用となることはいうまでもない。
ハザード分析表を普通の食品毎に作成しているのは、食品事業者にしても消費者にしても、個々のハザードがどんな食品に存在するかよりも、個々の食品にどんなハザードが存在するかの方が大切と考えるためである。ここに食品は、十分な食経験がありしたがって一般に安全と考えられている普通の食品を対象にする。あまり食べられていない食品は、情報が少ないために、ハザード分析表を作成するには多大な労力を必要するにも係わらず、出来上がるハザード分析表は簡単なものにならざるを得ない。逆説的ではあるが、ハザード分析表が簡単ものほど一般にリスクは高いと推定できる。
ハザード分析表が簡単であることは、一面でハザードに関する知見が乏しいことを示すにすぎない。