初物


 初物とは、端境期を経て次の出回り期の最初に供給されるものである。初物と同じような意味で使われる言葉に「はしり」がある。

 初物が最も話題になったのは江戸時代で、初鰹がその代表である。素堂の「目には青葉、山ほととぎす、初鰹」は、当時の様子を表した有名な句である。初鰹に加えて、初鮭、初なす、初茸を初物4天王と呼んでいたことがある。初物好みは町民の贅沢と考えられていたために、江戸時代には何回か初物禁止令が出された。

 初物と旬は似て非なるものである。季節感を大切にするという意味で両者は似ている。しかし、初物の季節感は季節というよりも季節の変わり目であり、初物志向が昂じると季節外れを もたらす。また、旬は合理的であるのに対し、初物は享楽的である。

 日本人は本音のところで初物が好きなので、多少高価でも買って食べる。生産者は利益が期待できるので、促成栽培等により早期出荷の努力をする。その結果、野菜の周年化が進んだ時代には、消費時期の早期化も進んだ。

 食品消費の周年化が進行した結果、広く認知された初鰹を残して、初物という言葉が現在では使われなくなっている。