国内における食料増産は必要


 日本の農業すなわち食料生産は大変厳しい状況に置かれている。国内生産は国内需要より少ないので、作れば直ぐ売れる産業であっても良いのであるが、そうはなっていない。海外には先進国を中心に農業生産が好調な国が多く、それらの国々 が輸出する農産物との厳しい競争を強いられているからである。

 その結果、国内には48.8haにも達する遊休農地が存在する。したがって農地拡大に対する社会の目は厳しい。たとえば諫早湾干拓事業では、農林水産省は無駄な農地を作るためにムツゴロウが住む貴重な干潟をなくするのかと厳しく糾弾された。

 都会に住んでいる人にとっては、食料確保が国の重要な施策であることは理解し難いかもしれない。問題は自分が金を稼げるかであって、金さえ稼ぐことができれば食料はいくらでも市場に溢れている。若い人であれば、食料が足りなくなる事態を実感できないかもしれない。

 問題は、一時的な食料危機が重大な混乱が引き起こさないかということと、世界的な食料の過剰基調が未来永劫に続くかということである。「家族は私がなんとかする」、「我が社は大丈夫」という視点からの議論は別にして、日本の国として食料を外国に全面的に依存して構わないというのは真面目な議論とは思えない。 食料確保は国の重要施策であるし、そのための最大の対応策、可能な限り国内で食料生産する体制を構築することである。

 食料増産で分かり易いのは、農地の拡大である。しかし、現実にこれは実施するのは容易でない。逆に、宅地、工業用地、道路などインフラ用地などに転用され、日本の農地は減少している。今ある農地はできるだけ維持する、止む得ずかい廃するだけの広さの農地は新たに造成するという施策が現実的である。

 食料の増産方策として期待できるのは、むしろ収量の向上である。収量の向上には農家の努力が寄与する部分もあるが、貢献度が大きいのは種子の改良である。幸い生物先端技術は今後とも発展が見込まれ、育種技術の飛躍的な発展が期待できる。これに関連して懸念されることに、組換え食品でみられたような消費者の抵抗がある。食品の安全性であるいは消費者の安心に対する対処はなによりも大切であるが、同時に日本の食料生産事情は、新しい種子の活用を求めている。

 新しい食料資源が貢献する可能性もある。しかし、その可能性はあまり高くない。最も期待できるのは、微生物タンパク質の利用であろう。しかし、微生物タンパク質を人が食料として大量に消費するのは 問題があるとされているので、飼料として利用するのが適切である。微生物タンパク質を本格的に利用すれば、飼料として大量に使用されている大豆や魚を節約 して食料に回すことができる。消費者の受容性にも配慮する必要はあるが。

 木材などに含まれるセルロース・ヘミセルロースを糖化してブドウ糖として利用することができれば、その貢献は大きい。しかし、長い研究開発の歴史があるのも係わらず 明確な展望は開けていない。この場合も食品用とすることには多くの問題があり、飼料とか微生物用の培地としての利用になると思われる。

 以上のようにどれもみてもそれぞれに問題を抱えている。現在最も効果が期待できるのは、収量の増加すなわち種子の改良である。

20059月作成   2006.10.8更新 ver.2