世界の穀物生産は好調だった 世界における穀物生産の動向を解析したことがある。一回目は 1961-1982年で、二回目は1975-1995年である。それぞれに面白い結果であったので、ご紹介したい。データはどちらもFAOのProduction Yearbookを採用している。一回目に解析した期間は 1961年から1982年までの21年間で あったが、この時期の世界の穀物生産量は年毎に3,652万トンずつ増加させていた。これは予想通りであったが、穀物生産量を人口で割り算した、一人当たりの穀物生産量としてみても、年毎に3.08kg/人ずつ増加させた。しかも、1982年の一人当たりの穀物生産量は371.9kg/人に達していた。この数字は、豊かな日本における一人当たり穀物消費量の308.8.kg/人より多かったのである。この事実には非常に驚ろかされた。というのは、当時食料危機が叫ばれ、穀物生産が激増する人口に追いつかないことが主張されていたからである。世界の穀物生産が好調な中で、食料危機が近いと議論をしていたことになる。なお、穀物生産を増加させた理由は、農地の拡大ではなく単収の増加である。二回目の結果は、少し様相を異にしていた。世界の穀物生産量は 1975年からの20年間でも年毎に約2,700万トンずつ増加していたが、一人当たりの穀物生産量は増加から減少に転じていた。ところがこの頃には、食料資源に関し楽観的な意見が主流を占めるようになっていた。穀物が過剰基調なので減少に転じたにすぎないとの指摘をもらったが、食料生産が限界となっている可能性もある。2回とも解析結果が、時々の食料資源問題に関する議論と一致していなかった。食料資源問題は、与えられたデータだけで議論するのではなく、新しいデータを探したり、自分で解析して議論することが大切と痛感している。 参照資料: 1.柳本正勝・柳本武美:穀物生産動向の最大周辺尤度平滑化法による解析, 食品総合研究所報告,50巻, 1〜8 (1988). 2.柳本正勝・柳本武美:世界における一人当たりの穀物生産量は減少に転じている, 食品総合研究所報告,62巻, 1〜8 (1998).
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