食料資源問題には長い論争があり、悲観論と楽観論が交錯している。この分野の専門家は一般に悲観論である。悲観論でないと、食料資源問題の重要性を発信するのが難しい からであろう。楽観論者は周辺分野の専門家に多く、この問題を一時的にだけ論じる。マルサスの「人口論」からローマクラブの「成長の限界」まで、長く悲観論者が大勢を占めたが、この20年くらいは楽観論が優勢にみえる。 今後はどう変化していくであろうか。人口は更に増え続けるであろうが、農業生産力の向上は今後とも人口増を上回ると期待できる。したがって、世界的にみると十分な食料を確保できる人が増えると予想できる。懸念材料はむしろ、経費の上昇、すなわち農業生産に掛かるコストが増加することであり、加工・流通に掛かるコストも増加することである。 アジア諸国を中心に、多くの国で2次産業(工業)、3次産業(商業)をはじめ、4次産業、5次産業と呼ぶべき産業も発達させ、現在の貨幣価値で1万ドル/人・年以上の所得を達成する国が多くなっている。その結果、 現在の途上国でも、栄養学的に望ましい食事、人生をエンジョイできる食事を実現するために、食料の需要が飛躍的に高まる。 これに対し、農業生産を向上させるためにコストが掛かる事情もあり、1次産業は付加価値が低く、高次の産業ほど付加価値が高いという現状の矛盾が顕在化する。農業大国は現在先進国と呼ばれる国々であり、競争力のある輸出産品である農産物 の価格の見直しを図ることも、その傾向を強める。また、食料を輸出できる先進国は、自国内の需要を優先させないと政権が維持できないので、国内の食料価格を引き下げるために補助金を使い、輸出する農産物には税金を掛ける という施策が考えられる。 農産物の価格が上昇するので、日本でも農業が現在よりも有利な産業となるが、自給は達成できない。高価になった農産物を輸入し続ける。更に、安全性確保とか利便性向上のためにコストを掛けるようになっているので、食料費は大幅に上がる。
もし、国民の所得格差が現在より大きくなっているならば、日本の低所得層は海外の中間層の購買力に太刀打ちできなくなる。その結果、低所得層は娯楽費などを節約しないと健康的な食事を維持することが困難にな
る。低所得層の食料確保にどれだけ補助金を使うかが、食料政策の重要課題となる。 |