食への関心が高まっている。これまでは食への関心というと、食品の安全性が中心であったが、最近では食生活の改善への関心が顕著になっている。具体的には、食育基本法が制定され、食事バランスガイドの設定された。食品の安全性も大切であるが、とかく議論先行になり勝ちである。食生活の改善にも関心が集まることは、食生活をバランス良く見るという意味で喜ばしい。 ところでこの分野では、 1980年における日本型食生活の提唱は画期的であった。それまでような欧米先進国を見習うという姿勢を改め、欧米の食生活よりも日本の食生活の方が優れていると主張したのである。当時はPFC熱量比率が注目され、欧米人の摂取構成のように、Fすなわち脂肪からの摂取熱量が全摂取熱量の40%を超えるのは過剰であり、欧米人に心臓病等の慢性疾患が多いのは、脂肪の摂取過剰に由来するのであるとした。したがって、日本人は所得が向上しても日本型食生活を維持し、F比率を30%を超えないよう努力することが大切とした。そのためには、米を中心とした穀物や野菜・魚をしっかりと摂る食生活が望ましいというのである。その後、「食生活指針」そして「食事バランスガイド」が提唱されたが、日本型食生活の考え方がそのバックボーンになっている。そして、日本人の食生活が世界でも優れているという考え方が定着している。本当にそうだろうか。また、そのように考えることが、望ましいのであろうか。実は筆者は、日本人は優良事例に向かって努力するのは得意であるが、世界に冠たる立場を主張するのは不得意だと考えている。大東亜共栄圏もそうだったし、日本型経営もそうであった。したがって、日本人が自分たちが世界一だと主張し始めると、見失っていることはないか、吟味することが大切と信じている。 日本型食生活が優れていると判断された背景には、生活習慣病が低い比率を保っていることと共に、男女とも平均寿命が世界一になったこと、アメリカで提唱されたマクガバン報告を実践すると日本人の食生活に近づくこと、などの事実がある。 列挙してみると、状況証拠ばかりで積極的に支持する証拠はないことが分かる。平均寿命の長さや生活習慣病の低さは、医療環境が改善した効果も大きい。 特に、マクガバン報告を根拠としたことの無意味さを指摘しておきたい。というのは、最近筆者は日本の食料消費パターンが変化した方向を解析した。その結果は下記論文を参照いただきたくことにして、公表はしなかったがアメリカの食料消費パターンが変化した方向も解析した。 1970-2000年の30年間の変化をみると、アメリカ人の食料消費パターンは穀物や野菜の消費量を増加させるなどマクガバン報告に準じた変化を示したが、日本とはさらに離れたという結果であった。接近したのは、現在のギリシャ、イタリア、ポルトガルに対してであった。世界全体と比較せずに、アメリカと日本の関係だけから見るので、誤った解釈 をしてしまったと考えられる。食生活を評価するうえで失念していると思われることに、体格と体力がある。食生活に問題があるとされる欧米人の体格と体力は圧倒的である。長寿・疾病の少なさも大切であるが、生活の質という点では体格と体力も大切である。 日本人の食生活は概ね良好と考えることに賛成である。したがって、日本人全体よりも個人レベルでの食生活の問題を改善することが、より大切な時代となっている。しかし、欧米の食生活の良い点は何かを問い直すことは、現在も大切な課題である。 参考資料:柳本正勝:日本の食料消費パターンが変化した方向 , 日本食品科学工学会誌, Vol.51, No.10, 524〜530 (2004). |