安全と安心を両立させる仕組み
 

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食品の安全施策においては、科学的根拠に基づいた安全性評価結果を踏まえて、リスク管理機関が具体案を策定するのが基本である。多くの場合は厚生労働省をはじめとする関係部局に任される。

  しかし、例外的措置も必要である。国民が関係部局の施策案では安心しないことが確認される場合である。このような例では、民意を反映した施策に修正が加えられるべきである。なお、ここでは国民全体の安心を想定しているが、少数グループの事情も考慮する必要がある。ただ、本論の目的から外れるので、この問題もあることを指摘するだけに留める。

  「食の不安に係わる要素」の項で指摘したように、食品分野における国民の不安は、安全性だけが原因ではない。したがって、国民の不安が確認された場合、安全性だけの問題なのか、安全性以外に も重要な要因があるかを見極めることが最初のステップになる。どちらのケースに該当するかで対応は異なる。

  原因が安全性である場合は、安全性の問題として対処できる。この場合は、当該案件についての国民の理解が不十分であることを示しているのであるから、リスコミをはじめ、国民の理解を得るための格段の努力が必要となる。同時に、安心を理由に安全性基準を特別に厳しくするとか監視・取締体制を強化する必要があるかもしれない。

  一方、安全性以外に重要な要因が含まれている場合は、安全性の徹底を図っても消費者の納得は得られない。この場合でも徹底的な安全性の確認が重要であるが、それだけで解決を目指すのではなく、国民の不安を理由にした規制が必要となる。規制のうちいちばん厳しいのは販売の禁止である。これは事業者の活動を否定する措置なので慎重な対応が必要であるが、国民が本当にそれを求めるならこの措置もやむを得ない。より現実的な施策としては、表示全数検査トレーサビリティALARP市販後調査および予防的措置などが考えられるので、対象案件の特徴を踏まえて、適宜組み合わせることになる。

  ここで、食の安心行政を展望しておく。まず根拠法令である。食品分野における国民の安心を反映させる法令は明確でない。そのために現在でも、食品衛生法を拡大解釈して、食の安心にも対応している。食品衛生法に基づくので、安心の問題を安全性施策の一部としてしまい、矛盾が生じている。ここで注目したいのが、食品安全基本法の第13条にある「食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、当該施策の策定に国民の意見を反映し、・・・・」との規定である。この規定は現在ではリスコミのための規定とされているが、少なくとも文章上は国民の意見すなわち民意を反映するべきとの規定と読むことができる。もしこの解釈を想定していないとすれば、国民の意見すなわち民意を反映することを明確にした規定に修正することが望ましい。

  次に、所管する部署である。結論からいうと、食の安心は消費者庁が所管するべきであろう。安心は消費者の問題なので、厚生労働省や農林水産省よりは消費者庁の方が相応しい。これを明確に規定した法令は見当たらないけれども、それを示唆するような法律はある。消費者庁が所管する消費者安全法では、第1条(目的)で「・・・、消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営む・・・」と規定するとともに、第4条(国及び地方公共団体の責務)で「消費者の意見を反映するために必要な措置・・・」と規定している。それを具体化した条文や政令・省令は見当たらないのであるが、この条文を根拠に食の安心に係わる施策を講じることは可能にみえる。また消費者庁及び消費者委員会設置法でも、第3条(任務)で「消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営む・・・」と規定している。消費者庁が 消費者基本計画を見直す中で、食の安心分野における役割を担っていくことを期待したい。

  最後に、強調してもしすぎることがない大切なことがある。民意の把握である。民意を根拠に規制するのだから当然である。これまでは、メディアの論調や消費者運動の高まりなどから、担当部局が大局的に判断してきた。メディアの論調や消費者運動の高まりなども勘案するべき事情だけれども、もっと大切なのは国民全体の意識の把握である。そのためには十分に吟味された本格的な調査を継続して実施することが 望ましい。

 

(2012年8月作成)(2014年7月改訂)