食味を数値で表す


 食味は、商品としての食べ物の重要な性質なので、これを数値で表すことができれば便利である。このために、たくさんの人が努力してきた。

 この分野で最も精力的に行われたのは、食品成分値とか物性を説明変数として食味を数値で表すことである。黒野が清酒について、竹生が米の食味について数式を提案したことを嚆矢とする。この場合、説明変数に食味に係わる因子を採用することが多く、科学的裏付けが明確という長所がある。しかし、大まかな傾向は示すことができても、信頼性が高くならないために、得られた数値が食味の指標として活用された例はない。

 一方近年では、近赤外線の吸収とか脂質二重膜による電気応答を利用して、食味を測定する試みがある。近赤外法による米の食味測定では、使用する波長には特別な意味はなく、官能評価結果との相関係数が高いという基準で選ばれているが、食味計として使用が広まっている。また脂質二重膜による電気応答も味との直接的な関係はないが、液状食品の食味計としての利用が期待されている。

 なお、食味を数値ではなくランクだけ表すことがある。例えば、米や給食パンなどで、評価項目そのと配点を決めて採点し、その合計点からランク付けする。清酒や味噌などで行われている鑑評会等でのランク付けも、基本的に同じ手法である。この場合は分析型の官能評価も取り入れており、またランク の数が少ない例が多いためか、結果はかなり信頼されている。