トップページに戻る 日本の食品安全行政の仕組みは、2003年に確立したといえる。この年にリスク評価の独立性を担保するために、食品安全基本法が制定され、内閣府に食品安全委員会が設置された。また、フードチェーンアプローチの重要性が指摘され、農林水産省が食品安全行政にも本格的に取り組むことになり、 具体的には消費・安全局が設置された。その後(2009年)消費者庁が設置され、 消費者安全課や食品表示課が設置されたが、食品安全行政との係わりはまだ明確でない。 それまでは、厚生労働省が食品衛生法に基づいて食品安全施策を講じていた。食品安全委員会の役割は薬事・食品衛生審議会(古くは食品衛生調査会)が担っていた。農林水産省 は農薬取締法や飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律などを所管していたが、生産者寄りの施策で消費者保護の視点が弱かった。農林水産省には食品安全の名前を付けた部署を設けないという 厚生労働省との約束があったと聞いている。 現在の体制はCodexのリスク分析の考え方に基づいている。リスク分析は、リスク管理とリスク評価及びリスクコミュニケーションからなる。このうち、リスク管理は厚生労働省と農林水産省が協力して、リスク評価は食品安全委員会が、リスコミはこの3つの 府省が独自にあるいは連携して実施している。 現在も残されている問題点としては、以下の3つがある。 @食品安全基本法はリスク評価に特化しており、法の名が体を表していない。食品安全行政における基本法の役割を担っているのは、現在でも食品衛生法である。 A厚生労働省と農林水産省の連携は必ずしも十分でない。農業生産部門は対象ごとに法律に分かれている反面、食品衛生法では対象が食品となっているために、農業生産部門への係わりが弱い。 B食品安全行政と産業振興行政の整理が不十分となっている。農業においては農林水産省が食品安全行政も産業振興行政
も所管している。ところが食品産業では、食品安全行政は主として厚生労働省が、産業振興行政は主として農林水産省が所管している。これまで安全行政と振興行政を分担した分野はなかったので、その仕分けが曖昧となって
きた。幸い、原子力発電行政で規制行政と振興行政が分離された。この仕分けも参考にしながら、食品分野でも整理する必要がある。 |