前項の「安心性と安全性」で説明したように、安心性は安全性を包含する。同じ食品の性質である安心性と安全性において、片方がもう片方を包含するということは、安心性と安全性が質的に異なることを意味する。この事実を踏まえ、安全性で作用をするのは物質であり、安心性で作用をするのは情報であると考えるに至った。すなわち、安心性が安心性を包含するのは、安全性に関する情報が安心性の一部のためである。この関係は、安心性と栄養性・嗜好性とでも同じ、栄養性や嗜好性に関する情報は、安全性に関する情報とともに、安心性を構成する。安心性とは食品の特性に関する情報に外ならないのである。
この考えに対しては、安心性とは食品の性質と捉えているので、情報が食品の性質と言えるのかという疑問があるかもしれない。確かに食品の性質とは食品の特性であり、一般的には物質を想定する。しかしながら、改めて考えると、食品の性質にはハードとして物質とのソフトとしての情報の両方を含むと考えることができる。
食品情報の代表的なものには、消費者が食品を観察して得る情報(観察情報)と食品事業者が食品に付随して提供する情報(表示情報あるいは品質情報)があるので、この2種類の情報を例にして上の捉え方を考察する。まず観察情報であるが、観察情報の対象は食品そのものであり、食品の性質を反映している。したがって、観察情報は食品の性質の一部と言えそうである。もう一つの表示情報であるが、食品表示として食品と一緒に提供されている情報は、食品と一体なってその一部と見なすことができる。すなわち表示情報も食品の性質を構成すると見なすことができる。以上のように、食品情報を食品の性質の一部とみなすことに不都合はない。