食の安全安心において、いつも問題になるのは安心の把握が難いことである。本サイトの親サイトでも「安心とは」の項を設けたのをはじめ、安心の的確な把握に努めてきたが、必ずしも十分に説明できたとは思っていない。これは筆者の浅学非才にも影響されているが、頼るべき文献も見当たらないことからすると、安心の複雑さと深遠さにも起因している。
そこで安心に対し正面から切り込むのではなく、少し角度を変えてアプローチすることを考えた。具体的には、安全感と安心性を考察することである。ここに安全感と安心性は良く使用される用語でもないが、さりとて全く新しい用語でもない。ただし、これまでに使用された例をみると、それぞれに意味が異なっている。そこで、本サイトで使用する安全感と安心性の意味を整理しておく。
端的にいうと、安全感は安全と安全性、そして安心性は安心と安心感を補完する用語と捉える。そして、安全・安全性・安全感と安心・安心性・安心感の6つの用語を統合的に捉え、下表のように整理する。
この関係を簡単に説明すると、まず安全と安心。安全が食品による体への危害がないことであるのに対し、安心は食品による心への危害がないことと捉えてきた。そして、両者はいわば結果である。この関係は、安全感と安心感にも当てはまる。この2つの用語は人の感じ方という点では同じで、安全感が食品による体への危害の感じ方であるのに対し、安心感は食品による心への危害の感じ方である。この関係はまた安全性と安心性にも当てはまる。この2つの用語は食品の性質という点では同じで、安全性は食品による体への危害がない性質で、安心性は心への危害がない性質である。
6つの用語のうち、安全と安全性はどちらも物についてであり、安心と安心感はどちらも心についてである。したがって、安全性や安全感はその意味をイメージし易い。一方、安全感と安心性は物と心の両方に係わるので、その意味をイメージし難い。この困難を克服すれば、物と心の両方に係わるので、部分的になるが心の問題を把握できると期待できる。