人の心に作用して安心・不安を生じさせるのは情報である。そして安心に影響する情報は多種多様と考えられるが、その中で安全情報が安心に最も強く影響することは疑いない。
安全情報は、通常は消費者の安心に役立つ。本来消費者の安心を損なうのは危険情報である。ここで指摘しておくと、消費者が懸念をもっておりしたがって確認したい情報が提供されないと、消費者の不安を誘発する。
安全安心で問題になるのは、安全情報を提供しても消費者が安心しないケースである。安全情報であっても、安心を損なうと消費者はその食品を選択しないので、結果として危険情報になる。このような事態が起きるのは、@元になる規制のあり方に信頼がない、A食品事業者が発信する情報に信頼がない、B適切でない表示ルール、がある。
安全情報も多種多様である。ただし、食品分野における安全情報の主要な物は、@食品事業者が提供する表示情報、A行政機関が提供する規制監視情報、B消費者が日常生活において入手する生活情報およびC社会情報の4つと考えられる。ここに生活情報とは消費者が食品の購入とか食事の場で口コミなどにより入手している情報であり、社会情報とはこれらの場とは別の場でマスコミなどから入手している情報を想定している。両者は明確に区別できるわけではないが、ここで言いたいことはこの2種の情報の役割は異なる事である。
4種の安全情報と安心の関係を整理して下図に示す。この図で言いたいことは、ここに表示情報と生活情報が規制監視と社会情報と安心に対する役割が異なることである。すなわち、表示情報と生活情報は受容基準で照合され、その結果消費者が安心したり不安になったりするのに対し、規制監視情報と社会情報は受容基準の形成に係わることである。
話を単純にするために、表示情報と規制監視情報の役割について述べる。表示情報と消費者が受信する情報(認知情報)が一致しないことを指摘する。表示情報は全て消費者に届くのではなく、消費者の心に形成されている選択基準のフィルターを通される。受容基準と照合されるのは、この認知情報である。表示情報と認知情報の違いは確認しておく必要がある。実際各種調査は表示が案外読まれていないとの結果を示している。規制監視情報も同じである。選択基準のフェイルターを通して消費者の認知情報となる。こちらは食知識の一部として受容基準の形成に係わる。