「安全情報と安全安心」

 安全を標榜した安心のための食品表示


  食品衛生法に基づいた表示基準府令で、規格基準に適合した組換え食品や放射線照射食品などに表示義務を課している。しかし、これが科学的根拠に基づく安全のための食品表示でないことは明らかであり、安全を標榜した安心のための食品表示といえる。実際、これらの表示は消費者の選択の機会を保証するためと説明されている。

  しかしながら、「食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令」(以下表示基準府令)により表示義務を課しているのである。食品衛生法に基づいて義務づけた食品表示だから、客観的には安全情報である。消費者が安全のために表示がなされていると理解するのは由なしとしない。このような表示が義務付けられているので、消費者は組換え食品や放射線照射食品を安全上の何らかの懸念があるから表示がされているのだろうと理解している。消費者は日常生活で繰り返し見かけるので、このような表示はこれらの食品に対する消費者の不安感を醸成し固定化する役割を果たしている。

  安全と安心が異なるように、安全情報と安心情報は異なる。安心のための情報を安全のための情報として取り扱うと、当然弊害が起きる。

  食品の安全性確保のためでなく、安心のためすなわち「自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保」を目的として表示を義務付けるのが適切である。そのためにも、安全確保とは別の「自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保」を目的とした食品表示府令が必要となっている。

(2014年6月作成)