「健康食品」

安全性評価の仕組みと実態

 
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公益財団法人日本健康・栄養食品協会(以下協会)が運営している安全性自主点検認証登録制度は、その名前が示すように、協会が事業者の実施する安全性自主点検を認証する制度である。特定保健用食品や機能性表示食品が 、府令の食品表示基準に基づく制度であるのとは異なっている。

  安全性自主点検認証登録制度では、申請用紙を「健康食品の安全性評価シート」と呼び、そこに、
  @評価が必要な原材料の特定 (学名 使用部位 原産地 生産国)
  A関連法規の適法性
  B原材料または類似品の食経験と健康被害情報 (医薬品との相互作用を含む)
  C「学名」、「成分名」それぞれのキーワードによる文献検索
  D遺伝毒性試験 急性毒性試験 反復投与試験 ヒト試験等の毒性試験
  E製造工程管理
  F一日摂取目安量設定の科学的根拠
を記載させている。

  ここに「健康食品の安全性評価シート」は複数枚からなる。対象が原材料の場合の例を示すと、必須の様式として「健康食品の安全性自主点検評価シート」など3枚のシートがあり、必要に応じて「適正な製造工程管理チェックリスト」などを求めている。中核での申請書である「健康食品の安全性自主点検評価シート」をみると、基本事項をはじめ「STEP1」から「STEP8」までの段階があり、各STEPは更に3以上の項目に分かれていて、記載内容は詳細に亘っている。

  ただし、STEP4の食経験の評価で「人の健康を害するおそれがあるとは認められないと判断できる」が準備されており、「はい」にレ点を打つと、STEP5とSTEP6の安全性情報やSTEP7の安全性試験をパスしてSTEP8に飛べる仕組みになっている。

  安全性自主点検認証登録制度は、「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」に基づいている。「健康食品の安全性自主点検評価シート」に「STEP1」から「STEP8」が含まれるのは、ガイドラインで提示されたフローシートに準じている。ただし、このフローシートを一部見直している。

  厚生労働省が示したガイドラインを見ると、「当然のことながら、この実施のみをもって当該食品の安全性が確実に担保されるものではないことに留意する必要がある。」とエクスキューズしているが、 単なるコメントといえ、実効性の担保はない。

  審査は、協会内に設置された安全性自主点検認証登録審査委員会で行われる。日本健康・栄養食品協会は厚生労働省のこの分野における中核の外郭団体なので、学識経験者が揃っていると推察されるけれども委員は公表されていないので確認はできない。申請の記載内容はもちろん審査内容も公表されることはない。

  付け加えると、上述のように確認事項にはE製造工程管理が含まれている。これは特定保健用食品の審査項目には含まれていない。この認証登録制度が、製造現場での安全性確保を重視していることが分かる。現場での安全性確保とは、急性毒性を引き起こす要因と異物混入への対応である。

  事前審査と並んで重要な市販後調査(PMS)の体制を求めていることも特筆される。惜しむらくは義務化していないことである。食品以外では市販後調査を義務付けている分野もあるが、その よいな分野の例をみると 社員が事件を把握しても企業としては認知しない例が少なくない。努力義務では実効性は期待できない所以である。

 <安全性評価の実態

 協会がこれまでに認証した「健康食品」は安全性自主点検認証登録商品と呼ばれ、2015年6月現在で、原材料として144商品、製品として11商品が認証されている。申請者や商品名などを含めたリストを公開している。

  問題は、審査の妥当性である。協会は厚生労働省のこの分野における代表的な外郭団体(公益財団法人)なので、審査委員の学識経験は揃っていると推察できる。ただし、協会内に設置された審査委員会であれば、協会の意向が反映されてしまうものである。食品基本法においてかつて厚生労働省の薬事食品衛生審議会で取り扱われていたリスク評価を移管するために、食品安全委員会を設置した事情を思い出したい。中央官庁の審議会ですら、中央官庁の意向を忖度してしまうと判断されたのである。 
 

(2015年6月作成)