特定保健用食品

安全性評価の仕組みと実態

 
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特定保健用食品の申請は、現在は消費者庁に提出される。消費者庁は申請の内容により食品安全基本法第十一条にある「人の健康に悪影響を及ぼすおそれがある生物学的、化学的若しくは物理的な要因又は状態であって、食品に含まれ、又は食品が置かれるおそれがあるものが当該食品が摂取されることにより人の健康に及ぼす影響についての評価が施策ごとに行われなければならない」の趣旨に則って、リスク評価をするべきと判断した場合は、食品安全委員会に諮問される。

  諮問を受けた食品安全委員会は、特定保健用食品の場合は、新開発食品専門調査会に付し審査を委ねる。審査結果は特定保健用食品評価書としてまとめられ、食品安全委員会本体の会議で確認し、食品安全委員会として消費者庁に回答する。

  食品安全委員会は、案件を審査する基準として「特定保健用食品の安全性評価に関する基本的考え方」を準備している。ここでは「(1)食経験」、「(2)in vitro及び動物を用いたin vivo試験等」、「(3)ヒト試験」に分けて、それぞれに報告されるべき事項が詳細に定められている。

 <食経験を中心とした安全性評価の実態

 特定保健用食品の安全性評価結果は、特定保健用食品評価書として公表している。これまでに食品安全委員会にリスク評価を依頼された案件は81品目あるが、記述のないものや一括評価を除くと56品目(2015年5月1日現在)である。下のまとめはこの56品目の記述内容に基づく。最新の食品健康影響評価の審議実績は、食品安全委員会の該当ページを参照してください。

 食経験の内容は、「(1)食経験」の項目が示されているだけで記述は自由形式であること、食経験とは何かが事業者の解釈に委ねられているために、記述内容をまとめることは容易ではない。また、食経験は主要な評価要因となっていないために、食経験をどう評価したかは明確でない。

  食経験の対象物質をみると、関与成分(有効成分のこと)が48品目と多いことが指摘できる。関与成分であれば、食経験よりも安全性情報(安全性試験データや危害情報)の方が重要である。食経験が重要な基原材料は24品目と少数に留まっている。商品(製品食品や最終製品)も食経験の対象物質とされているけれども、類似あるいはほぼ同じ商品が既に販売されていることを反映している。

  食経験の内容をみると、昔から食べているという例は、6品目と少数である。商品の販売量、関与成分の摂取量、含有量がそれぞれ15品目、13品目、15品目ある。これらも、既に販売している商品あるいはほとんど同じ商品を申請していることを反映している。

 既存添加物を中心に11品目で食品添加物であることを食経験の対象物質に含めていることが指摘される。また、非医リストに含まれていることを含めた例もある。これらを食品と呼ぶようになってきたためであろうが、そのことと食経験の対象物質に含めることは別問題である。

  なお、GRASリストに含まれていることやJECFAで安全性を確認していることを挙げている例もある。これらが食経験というよりも安全性情報である。「特定保健用食品の安全性評価に関する考え方」には安全性情報 の項目がないという不備にも影響されていが、同時に事業者が食経験を勝手に解釈する風潮を示している。

  商品の形態をみると、通常食品形態が多いけれども、サリメント形態も少なくない。特に指摘しておくと錠剤形態が7品目あるが、錠菓形態も2品目ある。これはどこが違うのか不明である。錠菓形態とは糖衣錠だとすると、わざわざ使いわけることに不自然さがある。というのは、錠剤形態やカプセル形態で申請された品目は、その名称で商品化されずに錠菓などとして商品化されている。 このように食経験を拡大解釈し、必ずしも必要ないところで食経験を適用していることが指摘できる。

 

(2015年6月作成)