安全安心は本サイトの中心課題であるが、従来は消費者の過剰な不安を背景とした安全安心で、合理的な安全性施策を歪める問題と捉えられてきた。つまり、石油たんぱくが開発中止に追い込まれたこと、遺伝子組換え食品が特別に厳しい安全性評価基準を課されていることなどである。
最近、安全性評価における食経験の活用の仕方に疑問を感じたので分析したところ、健康食品分野では、食経験を理由に安全性情報・安全性試験を減免しすぎていることを確認した。この現状は、消費者の過剰な安心を背景に、安全性施策が歪められているケースといえる。過剰な安心を背景にした安全安心が今日的な課題となっている。
以前から、健康食品では安全性に関し緩すぎる運用がなされていると感じていた。安全感を提唱した際、食品添加物や遺伝子組換え食品の安全感指数を計算すると低く、いわゆる健康食品の安全感指数を計算すると高かったけれども、これが安全性の程度を反映しているとは思えなかった。健康食品の安全感が高い理由は、いわゆる健康食品は健康に役立つのであるから、
安全であろう人々の認識である。
あるいは過剰な安心というのと違和感があるかもしれない。少なくとも安心を強く主張している消費者は見当たらないからである。
過剰な不安を背景にした安全安心の問題では、不安を主張する消費者の存在がある。しかしながら、次ページの「安心していると安全性規制が緩和される要因」で説明するように、安全性確保も規制には違いなので、規制緩和の力が働いている。人々が安心していると、科学的根拠に基づく水準に比べると緩すぎる安全性施策に流れてしまう。そういうことを前提に過剰な安心と呼んでいる。
過剰な不安を背景にした安全安心も、過剰な安心を背景にした安全安心も、どちらも問題を抱えている。どちらかというと、後者の過剰な安心を背景にした安全安心の方が問題は大きい。
この「新しいタイプの安全安心」欄では、過剰な不安を背景にした安全安心を総括するとともに、「特定保健用食品」、「健康食品」および「機能性表示食品」の3つの制度を例にして、過剰な安心を背景にした安全安心を検証する。
(2015年6月作成)
作成:柳本正勝 |