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安全性向上に貢献する科学


 科学技術が人に役に立つかどうかは、社会が科学技術をどう活かしているかにある。社会が科学技術を食品の安全性向上に活かすよう制御できれば、科学技術は食品の安全性向上に役立つ。 

現在の科学は、全体として食品の安全性向上に貢献していると信じられる。何故ならば、科学技術が高度に発達している国ほど、流通している食品の安全性レベルは高い。 

最も貢献しているのは、安全性試験とその審査の実施であろう。新しく登場する化学物質やプロセスについてあるいは既存の化学物質やプロセスについて、安全性試験の実施し、これを審査して、規制するかしないか、規制する場合はどう規制するかを決定している。これは食品安全性確保にとって重要な進歩である。人々が気付かない危害(見えない危害)を慢性毒性試験・発がん性試験・繁殖試験などを駆使して推認するようになった。安全・安心の問題が起きた時、専門家がしばしば感情的に対応しているのは、この努力が正当に評価されていないことへの苛立ちがあると考えている。 

次ぎに、事件の原因調査の進歩がある。日本における食中毒事件の原因調査は十分精度の高いものとなっている。さらには疫学調査により、顕在化していない健康被害を推定できるようになった。また、臨床検査と病理診断の解析によっても、病理との因果関係を推定することにより、警鐘を発するようになった。これらの進歩は、コンピューター技術に進歩による情報処理技術が大きく貢献した。 

分析化学・計測技術の進歩により、これまで検出限界以下で済ませてきた物質を量的に把握できるようになったことも、因果関係の究明に役立っている。      

 あまり指摘されていないことに、食品工場における原料処理技術と製品検査技術の普及がある。農産物には異種作物や土壌・石が混入している。これらを加工工程に入る前に排除することが当たり前になった。また原料農産物に混入していたあるいは加工工程中で混入した金属などの異物を製品検査で排除するようになった。製品中に含まれる食中毒菌をチェックするのも広く行われている。工場の内の品質管理システムも、GMP(あるいは一般的衛生管理事項)の遵守は当たり前で、HACCPISO22000の導入も進んでいる。

(2012年8月作成)