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安全性よりも優先されることのある要素

− 健康、美容 −


 食の安全・安心が問題にされると、食品では安全性が絶対的に重要なように語られる。確かに非常に重要な課題であるが、全ての要素に対して最優先かとなると、必ずしもそうでないケースも目立つ。これまでに説明した価格や食料資源に比べると、健康や美容は取るに足りない要素ではあるが、実は少なくない人がこちらを優先している。 

健康が目的の場合、健康と安全はベクトルの向きが似ているので、本来は全く問題がない。しかし、事はやや複雑である。つまり、健康志向に邁進している人は、主観的には安全性を重視しているつもり であるが、客観的にみると安全性を軽視している例が少なくない。 

代表的にはいわゆる健康食品の利用がある。いわゆる健康食品は健康に良いのだから、安全なはずと信じられている。健康食品愛好者の意識としては、薬ほど効くけれども食品だから副作用はない。現実は、いわゆる健康食品による危害が多発している。いわゆる健康食品に限らず、健康を目的に特定の食材を摂取すると、どうしても 栄養摂取に偏りが生ずるという問題もある。

一方、美容の場合、健康に比べると単純である。安全性を無視することはあっても、安全性を重視していると考える人はいない。目的は美しくなることである。このような人に、「将来に健康リスクがあるかもしれない」という忠告は役に立たないかもしれない。美しくなることより、期待する人生をゲットしたい。   

健康や美容を重視して安全性を軽視するのは、社会的問題というより個人の選択の問題である。行政が“正しい”方向に規制するのが良いか疑問がある。とはいえ、正しいと信じられている食生活に関する情報を提供し続ける必要がある。

(2012年8月作成)(2014年3月改訂)