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安全性よりも優先されることのある要素

− 食料資源 −


 安全性よりも優先されることのある要素として最も重要なのは、食料資源である。食料供給の過剰基調が長く続いているので、違和感のある方もいるかもしれないが、食料確保は歴史的にみると間違いなく最重要課題であった。食料確保が十分でなければ、栄養不足という重要な弊害がある。食料確保が不十分になると、食料確保と食品の安全性確保がしばしばリスク選択の問題になり、どちらを重視するかは正義とは何かに係わる深刻な課題となる。 

食料資源の問題は、2つに大別できる。@継続的な飢餓の問題(いわゆる食糧危機)とA突発的な欠乏の問題(災害での被災地など)である。前者はさらに飢餓のレベルで、@カロリーも欠乏している場合と、A栄養バランスが充足できない場合に分けることができる。 

慢性的な飢餓状態にある国においては、症状が軽微なハザードを持つ食品とか将来にがんを発生する確率を少し高める食品であっても、提供することが許されると考える。こう書くと非情に思えるかもしれないが、子供たちが餓死していくのに目を反らすのは、もっと非情である。 

栄養バランスが充足できない場合であっても、受容するべきリスクが少し高いだけの場合は、供給することが許される場合もあると考えている。国民の経済状態は同じではないので、貧しい人だけが危険な食品を強いられるのかという批判があるにしても、栄養バランスの悪い食事を長く強いることは、それ自体が小さくないリスクである。 

被災地のような突発的な欠乏の場合も、考え方は基本的に同じである。通常は短期間なので、もっと割り切って考えて良い。食べて直ぐ重篤な症状が出る食品を提供することは許されないけれども、長期間摂取による危害が懸念されるハザードの場合、特に体内での蓄積が知られていないのであれば、そのハザードを含む食品の供給も許されると考える。危機を脱出した後に、当該ハザードの摂取を暫く避ければ、影響を受ける可能性は極めて低い。取り敢えずは十分に食べて、当面の危機に立ち向かうことが重要である。

捕捉ながら、食料資源については、過去に勉強した内容をまとめた「食料資源のスタジオ」を公開しているので、そちらも参照ください。

(2012年8月作成)