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安全性よりも優先されることのある要素

− 価格 −


 食の安全・安心が問題にされると、食品では安全性が絶対的に重要なように語られる。確かに非常に重要な課題であるが、全ての要素に対して最優先かとなると、必ずしもそうでないケースも目立つ。その一つが価格である。価格は、現実に食品の安全性を脅かしている最大の 要因といって過言ではない。 

現在では、食品は企業活動を経て供給されている。経済活動にとって低価格は最重要要素であり、企業が価格競争をするのは当然である。社会のルールとして安全性遵守を組み込まないと、安全性を軽視する企業が出てくるのは必然と言える。 

一方、消費者にとっては同じ品質なら安価な方が良い。実質可処分所得の減少を余儀なくされている中で、やむを得ず安い商品を選択している消費者も多い。過当競争に陥っている市場では、安全性確保に要する経費が価格に反映できない事態が想定される。それが常態化すると、安全性を軽視した製品が市場を席巻する懸念がある。昨今のアンケート調査結果をみると、安全性よりも経済性が重視される傾向にある。 

格安の生鮮食品は、販売店の努力と才覚で実現している場合もあるが、そうでない場合も当然ある。原料食材よりも安い加工食品は、食品事業者の努力と才覚で実現している場合もあるが、そうでない場合も当然ある。4〜5年前に問題となった食品偽装事件でだまされた企業の多くは、 積極的に安価な原料を買い求めていた。 

流通による製造業支配が進んでいる。流通業者は、流通業者同士で激烈な競争している。この競争で流通業者が取る安直な方法は、納入業者(食品企業)を締め付けることである。納入業者は消費者に評価される前に、流通業者に選択されなければならない。流通業者に気付かれなければ、安全性への配慮の一部を省略して業者間競争に勝つ努力をする納入業者がいても不思議ではない。 

食品企業の安全性確保のための努力が、消費者から購入価格で評価されることが不可欠である。取り敢えずの消費者の自衛策としては、それが経済的に可能であれば、確かな価格の商品を購入することである。

(2012年8月作成)