トップページ

安心に係わる措置の吟味

市販後調査


 安全性審査を経て認可した化学物質などについて、申請企業に対し上市後にも健康被害などの事件・情報をリスク管理当局に報告することを義務付ければ、安全性審査の限界を補うことができる。その結果、国民の安心に寄与する。 

市販後調査はPMSとも呼ばれ る。PMSは、Post Market Surveillanceでの 略語である。安全性審査を事前審査、市販後調査を事後調査と位置づけ、この両方でリスク管理が達成できると捉える。事前審査で完全を期すことは現実的でない。事前審査では想定できなかったことが、市販すると起きてしまうことがある。リスク管理機関も当然監視するが、開発者・販売者は事件情報を入手し易い立場にあることから、報告の責務を負わせる。 

医薬品では、薬事法第77条によって6ケ月間の市販直後調査が課せられている。特定のケースでなく全ての新薬が対象になっている。参考までに、医薬品では市販後調査だけでなく、副作用報告も同じ77条で義務付けている。 

食品分野でも行政指導はあると思われるが、制度化はされていない。医薬品に比べると食品の場合は、摂取の場が把握し難いこととか医療機関との連携が ほとんどないなどの問題がある。したがって食品事業者が入手できる情報には限界がある。 

しかし、食品分野でも市販後調査は必要である。薬と同じ制度にすると実施困難になるので、食品向けの仕組みが必要である。この意味では安全性試験と同じ考え方になる。食品の場合、リスク管理機関が果たすべき役割が医薬品の場合より大きくなるのかもしれない。既に実施されている食中毒調査、事故情報データバンク、RASFFなどの調査結果が活用できる。 

実施にあたっては、安全性を審査した案件は全て対象にするべきある。というより、従前の食品を含めて、食品による健康被害が疑われた場合は全ての案件をリスク管理機関に報告する仕組みの導入が望まれる。

(2012年8月作成)