国民が不安を持つ食品について、不安の対象となっている物質については全数検査を義務付けて、検査結果が基準値を超えた製品は生産ラインから排除すれば、国民の安心を得ることができる。 成功した事例としては、BSEでの全頭検査がある。 国内にBSEに感染した牛が確認されてパニッック状態になった時、全頭検査の実施に踏み切ると、牛肉に対する社会の厳しい目が一気に納まった。 ただしその一方で、アメリカなどの指摘に合理的な説明ができないにも係わらず、何時までも中止できない。 全数検査は究極の品質管理といえ、工業分野での実施例は少なくない。たとえば製品の品質を高めるために、部品の全数検査を行い欠陥製品の発生率を低くしている。 工業製品では全数検査実施できるのは、特に金属製品の場合、一般に物理的計測が可能であり、非破壊検査が可能でかつ検査速度が速いので、費用対効果が十分に成り立つためである。 農産物・食品でも実施例は一部にある。特に異物検査の場である。原料検査とか製品検査で金属探知機を利用することは広く行われている。そこまでいかなくても、目視で確認することも広く行われている。 農産物・食品において、分析・計測法が生物学的、化学的手法の場合は、一般に困難である。非破壊検査が難しく、測定に時間を要する。それに加えて、測定対象の形が不揃いで一定でない事情もある。 さらに、経費の問題がある。社会的に問題となった場合、全数検査はしばしば公的機関あるいは補助金で実施される。その裏付けなく全数検査の実施を義務化すると、食品事業者に経費負担の問題が起きる。 全数検査は分かり易くて安心に直結するけれども、実行には多くの困難を伴う。サンプリング試験と組み合わせることが現実的な対応といえる。 |