国民の安心を把握する
 

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 食の安全・安心施策に民意を反映させていくためにも、民意を把握することが重要である。特に販売を禁止するような場合は、担当部局だけで判断するのではなく、内閣なり国会の関与が必要かもしれない。 民意を把握するのに最も望ましいのは国民投票であるが、現実の問題として到底実施不可能である。

 国民投票は無理としても、次善の策として世論調査がある。世論の動向が重要なのは食の安全・安心分野だけではないので、大小各種の世論調査・意識調査が広く行われている。食の安全・安心のための措置の裏付けとなる世論調査としては、現在のところ内閣府が実施している世論調査が最適である。この実施も実際には難しいと思われるが、対象を国民全体にしていれば意識調査でも利用可能である。昨今の意識調査手法は進歩しており、たとえば新聞社の意識調査をみても、近年では結果が互いに良く一致している。十分に準備し経験を積んで修正を加えれば、かなり信頼性の高い調査結果が得られる。内閣府による世論調査は、その意識調査の結果を適宜確認するだけで良いかもしれない。

 調査の集計結果は、それを単に眺めるだけで判断するのでなく、食品の安全性に対する安心を定量的に表現することが望ましい。各項目を比較するとか、時系列的に比較するのに役立つ。筆者はこの目的に安全感指数を利用することを提案している。

 

調査は定期的に実施することが望ましい。これは後述の安心の変化を把握するためでもあるが、新しく問題になった案件を、これまでに問題になってきた案件と比較することができる。食の安全・安心に係わる議論は、とかく先鋭化する。その時に既存の案件と比べたデータがあると、取るべき方策の姿が見えてくる。

 

食品安全委員会は、「食品の安全性に関する意識等について」の調査を毎年実施している。調査の名前は安全性だけども、内容は食の安心を含めた調査である。この調査の対象は、食品安全委員会が募集した食品安全モニターなので、国民の意識調査とは言えない。しかしながら、 国の機関が毎年実施している調査なので、現時点では参照に値する資料となっている。

 

食品の安全性に関する不安が長期的にみると変化することはあまり指摘されない。世の中は変わるし、世論すなわち民意も変わる。食品の安全性に対する感じ方も変わるのである。実際、筆者は「食品の安全性に関する意識等について」のデータを用いて、組換え食品に対する安全感指数は向上していることを明らかにしてきた。

 

(2012年8月作成)