安全安心と安心安全

 
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 本サイトの名称は「食品安全安心研究所」で、「食の安全安心」に注目している。ところが、安全と安心の順序を逆にした安心安全という用語も広く利用されている。そこで本項では、安全安心と安心安全の異同を吟味する。

 四字熟語の場合、一般的には後ろにある用語に重みがある。しかしながら、企業の合併では有力な方の企業の名前が前にある例が多いことから分かるように、前にある方の比重が重いこともある。安全安心についても同じで、「安全安心とは」で説明したように、安全を重視する場合と安心を重視する見解がある。安全安心と安心安全の違いは、単純ではなさそうである。


 筆者は安全安心の方を先に馴染んだので、
用語として安全安心が 先に定着し、その後で安心安全が登場したと想像していたけれども、事実ではない。国会図書館のNDL-OPACと三大新聞の検索サイトで調べたところ、先駆的な使用例は、雑誌記事でも新聞記事でも僅かながら安心安全の方が先行していた。 ところが、本格的な使用の始まりは、逆に安全安心が少し先行した。そして現在も安全安心が優位であるけれども、勢いは安心安全の方にある。使用の 実態も単純ではない。

 現在の使用頻度を別視点で探るために、Google検索を行った。キーワードを“安全安心”として検索すると1,050万件ヒットするのに対し、“安心安全”では1,660万件のヒットであった。次ぎに「食の」を付けて検索すると、“食の安全安心”だと44万件に対し、“食の安心安全”だと278万件であった。Google検索だとヒット数の多さがそのまま使用頻度を示すわけではないが、凡その目安になる。雑誌記事や新聞記事と異なり、インターネットでは既に安心安全の方が多そうである。

 安全安心と安心安全のどちらが適切かというと、個人的には安心安全に移行することにメリットがあると考えている。というのは、食品分野における安全安心は長い混乱を経験してきた。この用語を使用すると、過去の混乱を引きずる可能性が高い。新しい概念としての安全安心を模索するには、同じことの別の表現である安心安全の方が適している。


(2013年11月作成)