乳等省令は略称で、正式には「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」である。食品衛生法の法令体系の中で省令となっているのは、食品衛生法施行規則とこの乳等省令だけなので、その重みが理解できる。これは乳及び乳製品の安全性確保の重要性に鑑み、特別に策定されたものであろう。ハザード分析表でもその重要性に鑑み、既に作成を済ませている。
牛乳のハザード分析表の作成過程で、乳等省令が家畜伝染病法により規定されている動物病原菌の一部を無視しているために、無視された動物病原菌は規制ハザードといえるのかの
問題が生じた。
具体的には、乳等省令では、第3条において「法第9条第1項に規定する厚生労働省令で定める場合、(中略)別表に定めるところによる」と規定している。これを受けて別表では「次に掲げる疾病にかかっておらず、及びその疑いがなく、並びに次に掲げる異常がない場合」として34の疾病・異常が掲載されている。一方、第3条が引用している食品衛生法第9条第1項では、検査は「と畜場法第14条第6項各号に掲げる疾病又は異常」となっている。そしてと畜場法第14条第6項では、検査は「1.家畜伝染病法第2条第一項に規定する家畜伝染病及び同法第4条第1項に規定する届出伝染病。(2と3は略)」としている。
すなわち、家畜伝染病と届出伝染病は上の34疾病・異常に含まれるはずである。ところが、牛に係わる家畜伝染病は15種のうち3種、届出伝染病は22種のうち18種が上の34疾病・異常に含まれないのである。ハザード分析表の作成では、法令の論理を重視して、乳等省令が無視した家畜伝染病法上の家畜伝染病と届出伝染病の原因菌は規制ハザードとみなした。
この件が難しいのは、乳等省令が無視している動物病原菌はリスク管理の観点からみると規制する必要のないものと想像できることである。とはいえ、リスク管理の観点からは間違っていなくても、法令の整合性は確保されるべきである。因みにと畜場法では、検査範囲とそれに基づく措置を別の表にすることにより、整合性を確保している。